幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~
「――支払いはオレがしとく」
大智がそう言うので,あたしは彼の厚意に素直に甘えることにした。
カフェを出ると,普段からよく買い物をしている高級スーパーで夕食の材料を買い込み,急いでマンションに帰った。
〝マンション〟とはいっても,あたしと正樹さんの夫婦が住んでいるのは三十五階建て・オートロック付きの超高層マンション。ちなみに賃貸ではなく,藤木グループの持ち物である。
スーパーの店内で迷ったすえに,夕食メニューは豚肉のショウガ焼きときんぴらごぼうに決めた。あたしはこれでも料理が得意なのだ。
でも,こうしてあたしが一生懸命考えてお料理しても,あの人は「美味しい」とも「まずい」とも,何も感想を言ってくれないから,料理をする側としては何とも作り甲斐がない。
そもそもあの人は,他の家事についても感謝すらしてくれない。家政婦のやることには,いちいち感謝するのもバカらしいんだろうか。
別にあたしにだって,好きでもないあの人に恩を売る気は毛頭ないのだけれど。