幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~
「そんな勝手なこと,(おれ)が許すと――」

「『許さない』なんて言ってもムダです。もう先方にはOKの返事しちゃいましたから」

 どうせ「許さない」と言われるだろうと思い,あたしは先手を打った。――でも,「返事をした」というのはハッタリだ。もちろん大智の誘いには乗るつもりでいるけど,まだ返事なんてしていない。

 ただ,この話だけは正樹さんに反対されたくなかった。そのためには,あたしがもう返事をしたんだと,もう決まっているんだとこの人に思わせたかったのだ。

「今の職場の退職の手続きもキチンとします。入社はそれからでもいいって言われてますから」

「里桜……,そんなことで,俺がお前の転職を認めると――」

「あなたに認めてもらう必要なんてないでしょう? あたしはあなたに雇われてるわけじゃないんですから。あたしが決めたことに,あなたが反対する権利はないと思います」

 あたしはこの際だから,言いたいことをズバズバ言ってのけた。あたしがちゃんと自己主張できる女だということを,この分らず屋の夫に知ってもらいたかったのだ。
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