悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2
 立ち居振る舞いは変わらず、皇宮一の貴公子の名をほしいままにしていた時と同じに見える。だが、今のアンドレアスは、まったく別人のように見えた。

「話ってなんだ」

 そう問いかけるヴィルヘルムは、警戒心を隠す様子など見受けられない。アンドレアスはそれもまた軽く受け流したようだった。

「俺は明日、ターナジアに戻る。早朝の出発になるからな。その前に礼だけしにきた」
「……え?」

 皇子の前だというのに、遠慮のない声が思わず漏れた。このまま皇宮にとどまるために工作をするものだと思っていたし、ちょうど今ヴィルヘルムとそう話していたところだった。
 それなのに、明日戻るという。それだけではなく、礼をしに来たとはどういうことだ。

「先日の戦、ターナジアのマレイモを買い上げるように進言しただろう。おかげで、一息つく余裕ができた。栽培方法も、領地の者がしっかり覚えたからな。これからは、ターナジアに適したやり方でやっていくつもりだ」
「……ウルスラの近くに、マレイモを大量に栽培しているところがあるんだから、そう具申するだろう。礼を言われるほどのことじゃない」
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