悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2
「どこかにお出かけになって、足止めされているだけではなくて?」

 ターナジアはまだ、未開の地も多い。大雨で道がぬかるめば、戻れなくなることもあるだろう。だが、父はまたもや首を横に振った。

「朝、従僕がお支度に向かった時には、ベッドが空だったそうだ。争った気配はなく、ベッドを使った形跡もないらしい」
「では、殿下がご自分の意志で出ていかれた……ということ?」

 思い出されるのは、先日、ヴィルヘルムのもとを訪れた彼の姿だった。ヴィルヘルムとレオンティーナに礼をのべた彼は、以前とは違うように見えた。
 立ち直ったように見えていたのに、わざわざ出ていく必要などあるのだろうか。

「そうかもしれないが、殿下の存在を面白くないと思う者もいる。殿下をだまし、穏便に連れ出したのかもしれない」
「それは……そうかもしれないけれど」

 父の言葉には、完全に納得したわけではない。
だが、アンドレアスが行方不明となれば、ザリロッド王国がハルディール夫人を国に戻すように要求してくるのもわかる。

「ベルンハルト殿下も、ターナジアに向かうそうだ」
「そこで、先方と会うのですね。でも、なぜ私を……?」
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