可愛くないから、キミがいい【完】
東口から外へ出る階段のほうへ歩き出したやつを、数秒立ち止まったまま見ていたら、顔だけ、こちらに向けて、「行くぞ」と偉そうな口調で言われたから、丁寧なエスコートくらいしたらどう、とまた不満に思う。
階段を数段上ったところで、壁側にまわって、隣に並んだ。
ちらちら、と周りからの視線を感じる。
美男美女とか、そういう類のことを思われているんだと思う。明らかにそういう視線だもん。
今日もまた、美女、の部分だけ、有難く受け取っておく。
「どこ行くつもりなわけ?」
天使みたいな表情だけ張り付けて、口調は取り繕うこともなく、和泉しゅうにだけ聞こえる声で尋ねる。
「さあ? 楽しいとこ」
「何それ」
「楽しませるって言っただろ」
「ふーん。相当な自信がおありなようで? 言っとくけど、みゆは厳しいから」
階段をのぼりきったところで誰にも見られないように、小さく舌を出したら、なぜか、和泉しゅうは破願して、私の結んだ後ろ髪に一瞬だけ触れてきた。
今日も、和泉しゅうの分際でセクハラをしてくるつもりみたいだ。
本当に、嫌なのに、嫌悪感が背中を這わないから困るのだ。