可愛くないから、キミがいい【完】
「お前、可愛いこぶっててもぶってなくても、
やっぱ何かしらウゼェのな」
じゃあ、もっと、ウザそうな顔したらどうなの。
嫌なことを言ってるつもりなのに、全然響いていないのが悔しくて、可愛くいるよりも可愛くいない方が難しくて、どうすればいいのか分からずに、和泉しゅうから目を逸らす。
「和泉くんもウザいから」
「ん。でも、俺はやっぱこっちのほうがいい」
「は?」
「てことで、思う存分、ウザくいれば」
そう付け足して、
また、彼は、歩き出してしまう。
広い背中。すらりと伸びた長い脚。
エスコートもできないくせに、また、和泉しゅうは少し歩いたところで顔だけ振り返って、「なんで、すぐ立ち止まるんだよ」と文句を垂れてきた。
本当に、やっぱり、
この男といると、調子がくるっている。
自分がどうしたいのかとか、どう見せたいのかとか、そういうものが、濁ってしまう。
可愛い、ってどこからか聞こえてきた男の人の声も、輝いてくれなくて。
追いついて、「エスコートくらいしたら?」と文句を返したら、「お前はウザい男に、手でも繋いでほしいの?」とまた馬鹿にするように笑われたから、もうそれ以上は、ムカつくし何も言わないことにした。