可愛くないから、キミがいい【完】
「その前に、一個だけな」
「なに?」
「今日は、なんでも好きにしろよ」
捨て台詞以外の、好きにしろよ、を、私は生まれて初めて聞いた。
言われなくても、そうするつもりなのに。
まさか、こんなにたくさん可愛くない反応をあげてるのに、私が気を遣っているとでも思っているのだろうか。バカみたいだ。
唇をぎゅっと結んで頷いたら、ようやくチケットを離してくれる。
嫌味を言っても、大げさに最悪な態度をとっても、この男には何にも響いていないなら、ひとりで腹を立ててばかりいるのも虚しくなってきて、考えを変えてみようかと思い直す。
「じゃあ、みゆが、皆にうらやましがられるような態度にしてよ」
こんなこと、誰にも言ったことないけれど、好きにしていいということなら、思う存分、優越感を撫でてくれるようなアクセサリーの役割を果たしてもらおうと思った。
ちら、と隣を見上げたら、渋々といった風に和泉しゅうが頷く。
それから、不意に、手をすくわれて。
「っ、え、」
そのまま、ごつごつした大きい手に包まれたかと思ったら、引っ張られるようにゲートの方へ連れていかれた。