先生がいてくれるなら②【完】

ベッドの上には、痛々しい姿で横たわる彼女の姿──。


不意に現れた私を捉えた彼女の瞳は虚ろで、まだ混乱する記憶の断片をたぐり寄せるような、そんな表情をしている。



「こんにちは、……」


私が掠れる声でそう声をかけると、彼女は、ゆっくりと私をその瞳に映す。



まだ虚ろなその瞳に、私は一体どう映っているんだろうか……。



病室へと足を踏み入れたのは、私だけだった。


たったいま私に声をかけてくれた光貴先生は、彼女から見えない位置である廊下に立ったまま。


恐らく、自身が藤野先生の弟であることを悟られて私が不利にならないようにするためだろうと思う。


きっと彼女が目を覚ましてから今までとても気を付けてくれていたのだろうと思うと、あまりにも申し訳ない気持ちになる。


全てに気付いた上で、気付かなかったことにしてくれている光貴先生には本当に感謝しかない。



「……ざまぁ見ろ、って、思ってるでしょ」



彼女にそう声をかけられ、私はハッと我に返った。


気の強そうな彼女の瞳が、先ほどとは違い今は私をしっかりと捉えている。



普通ならそうかも知れない。


ざまあみろって、思うのかも知れない。


だけど、生死を彷徨った人に対してそんな事を思うんなんて、私には出来なかった。



だから私は正直に「そんな事思ってません」と答えたが、彼女は納得しなかっただろう。




「……あなたって、どこまでバカなの……?」




彼女の声が冷たく病室内に響いて、私は思わずクラリと目眩がした────





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