先生がいてくれるなら②【完】
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高峰さんの身体は一応順調に回復しているようだった。
一時意識不明になったものの脳への損傷などは見られず、いくらかの骨折と打撲で済んだのは奇跡だと光貴先生や主治医の先生が言っていた。
とは言え、自由に身体を動かすことはまだまだ出来ない。
ベッドの上で身体を起こすことも今はまだ一人では辛いはずだ。
身の回りの世話をする人が必要で、彼女の意識が戻ってすぐの頃に私が「ご家族に連絡したい」と言うと、「私を心配する家族なんかいないわ。連絡したって、誰も来ないから余計なことしないでちょうだい」と言われた。
高峰さんは中学・高校と寮生活で、高校を卒業して大学に進学した後も家には戻らず一人暮らしをしているらしい。
今は身の回りのことを一人で出来ないわけだから、誰かに手伝ってもらう必要がある。
でも、どうしてもご家族の連絡先を教えて貰うことは出来なかった。
長期入院となれば身の回りの物も色々と必要になる。
下着やパジャマの着替え、洗面用具、そして洗濯なども……。
彼女の借りている部屋に取りに行くことは彼女が許してくれなさそうだし、病院の売店で一部の物は買えるとしても、これからしばらくとなると洗濯だけはしないわけにはいかない。
病院では有料で洗濯をしてくれるサービスもあるけど……
「あの、洗濯物があれば、出して貰えれば私が代わりに……」
そう言葉にした所で、私は高峰さんに思いっきり睨まれた。
言葉が無くても、この威圧感……私は思わず押し黙る。
「恩を売っても無駄よ」
彼女はそう言い放って、私から顔を背けた。
その仕草の途中でどこかが痛んだのだろう、背けてしまったため少ししか見えないが、明らかに顔を顰めているのが分かる。