身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
菖悟さんはすぐに駆け寄り、私の前に立ちはだかった。

「やめろ!」

「わー、これが川嶺さまの本性でしたか」

どこか楽しげに呟く北瀬マネージャーに、川嶺さまはさらに激昂し、顔を真っ赤にする。

「……っ、もういい。寄って集って私を馬鹿にするのはいい加減にして! さよなら!」

プライドが許さなかったのだろう、啖呵を切った彼女は足早にレストランを出て行った。

私はその光景を呆然と見つめる。

あまりの出来事に思考が追いつかなかった。

「紗衣、怪我はないか?」

菖悟さんは心配そうに私をのぞき込んだ。

「はい、大丈夫です……。でも北瀬マネージャー……、マリヨンは大丈夫でしょうか?」

私は北瀬マネージャーに尋ねた。

彼女はマリヨンを逆恨みしないだろうか。私に向けられる分はしかたがないけれど、マリヨンが損害を被るのは耐え難かった。

マリヨンは私だけじゃなく、たくさんの人の思いが詰まった大切な場所なのだ。

「たとえ何かしてきたとしても、それくらいで評判が落ちるようなやわな経営はしていないよ」

胸を張って断言する北瀬マネージャーに、私は頭の下がる思いだった。

「それに、これ以上紗衣に何かしようとするなら、俺が絶対に許さない」

菖悟さんの声に、私は彼を見上げる。

「菖悟さん……」

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