身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
一週間ぶりに顔を合わせた彼は、何も変わらずに私を一途に見つめ返してくれた。

……菖悟さんと話したい。きちんと彼に、私の本当の気持ちを聞いてほしかった。

堰を切ったように、熱い思いが胸に押し寄せる。

「紗衣、俺たちのマンションに帰ろう」

手を差し伸べられ、私は迷いなくその手を取った。

その瞬間、「一件落着」と北瀬マネージャーの弾んだ声がする。

「ほら早く行って。さっきからキッチンの入り口で店員さんが困ってるんだよね」

彼に言われてキッチンを見やると、確かにそこには先ほど彼が注文した料理らしき皿を持った店員さんが、はらはらした表情で立ち尽していた。

「す、すみません」

私はバッグを掴み、すぐに店を出ようとした。

静かな店で騒いでしまい、とんでもない迷惑をかけてしまった。

「北瀬、感謝する。この礼は後日必ずするから」

去り際に菖悟さんが声をかけると、北瀬マネージャーは少しだけきまりが悪そうな顔をする。

「まあふたりの結婚に、俺も責任がないわけじゃないからね? もちろんお礼はしてもらうけど」

すぐに白い歯をこぼした北瀬マネージャーを残し、私は菖悟さんと彼のマンションに向かった。


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