身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
揺れをまったく感じさせないエレベーターは不思議な感覚で、無言が少し落ち着かない。

「あ、そういえば、山岡さんが私の運転手になったと言っていたのですが」

私ははっとし、高須賀さまに確認した。

「ああ、通勤に使うといい」

「私、電車で大丈夫です」

昨日彼と食事に行った際の送迎は、恐れ多くもありがたかったけれど、毎日となると話は別だ。ここからマリヨンまで、今までひとり暮らしをしていた部屋からよりは少し遠いけれど、電車で通えない距離ではなかった。むしろ電車のほうが気が楽だ。

「ならば彼は解雇ということになるな」

淡々と口にした高須賀さまを、私は見上げる。

「解雇ですか?」

「ああ。紗衣が必要ないと言うならそうなるだろう」

「……」

私はつい口ごもってしまう。自分のせいで誰かの仕事がなくなると言われると、強く拒めなくなった。
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