身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「いや、俺が作るよ。紗衣は座ってろ」

「え?」

虚を衝かれた私は、ワンテンポ遅れて彼に訊く。

「高須賀さま、お料理できるのですか?」

「簡単なものならな」

高須賀さまは微笑んで、上着を脱いでソファの背にかけると、シャツを腕まくりしながらキッチンに向かった。

アイランドキッチンの向こう側にある巨大な冷蔵庫を開け、何やら思案している。

「リクエストはあるか? 思ったよりなんでもできそうだぞ」

「えっと……じゃあ、オムライス?」

反射的に答えたあと、「高須賀さまはオムライスを食べるのでしょうか?」と私は素直な疑問をぶつけた。

「俺を何だと思っている」

高須賀さまは苦笑いし、食材と向き合う。私はその光景を信じられない思いで眺めた。まさかあの高須賀さまが手料理を振る舞ってくれるなど想像を絶している。

しかも調理時間は全部で二十分もかからない手際のよさだった。

おしゃれなダイニングテーブルには、きれいなラグビーボール形のケチャップオムライスと生ハムのカルパッチョ、コーンクリームスープが並ぶ。

向かい合って席に着くと、手を合わせてからスプーンを手に取った。
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