身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
ふわふわの卵の中は、定番のケチャップ味のチキンライスだった。

その懐かしく優しい味に、意図せず父の思い出が甦る。じわっと目の奥が熱くなり、私はそのオムライスに釘付けになった。

「……」

「どうした? 口に合わないか?」

心許なげな高須賀さまに、私は首を横に振る。

「いえ、とってもおいしいです。……父が作るオムライスに似ていたので、つい思い出してしまいました」

「紗衣の父?」

「はい。父は生前、体の弱い母に代わって、私にごはんを作ってくれたんです。私はその中でもオムライスが一番好きでした」

父のオムライスはデミグラスソースやホワイトソースではなく、高須賀さまが作ってくれたものと同じ、少し酸味のあるケチャップだった。本当によく似ていて、思いがけない偶然に私の大切な記憶が呼び起こされたのだ。

「お父さまはすでに他界されているのか?」

高須賀さまは少し驚いた面持ちで私に尋ねた。

「はい。父だけじゃなく母も、私が十八歳のときに」

「そうだったのか……」
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