身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「すみません、本当に……」

「熱いぞ。食べさせてやろうか?」

隣から顔をのぞき込み、彼は私のスプーンを手に取ろうとした。

「じ、自分で食べられます。本当にすみません」

すかさずスプーンを掴みながら謝り倒す私に、彼は困ったような顔になる。

「どうしてそんなに謝るんだ?」

「こんなにしてもらって、申し訳なくて……」

「俺がしたくてやっているだけだろ」

「でも……」

「おまえはもっと、してもらうことや与えられることに慣れろ」

以前からそれが気になっていたのだと、菖悟さんは明かした。もっと俺に甘えろと、頭を抱き寄せられる。

「……っ」

私はそれに、ずっと張り詰めていたものがパチンと弾けてしまう。

けれど気づかれたくなくて、ごまかすように雑炊を口に運んだ。

けれどそれを食べたのは失敗だった。

「……ぅ……」

「どうした?」

彼は私に静かに尋ねた。

「……おいしいです……っ」

私は声を枯らしてしまう。彼の料理は、あまりにも心に染み入ってくる。

どうして彼はこんなに優しい人なのだろう。
< 94 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop