身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「紗衣は泣き虫なんだな」

私は今まで人前で泣いたことなんてなかった。両親が亡くなったときでさえ、気丈に振る舞った。

けれど彼はなぜか私の涙腺を刺激する。私の胸に奥深く入り込んでくる。

「私、仕事もまともにできなくて、どうしようもないのに……」

「紗衣は精いっぱいやっている。やりすぎなくらいだ」

菖悟さんは私を慰めてくれた。

けれど私はかぶりを振る。

「こんなのじゃだめなんです。私はもっともっとがんばらなきゃ。お父さんやお母さんのためにも……っ」

私の秘めた決意のかけらがこぼれ、彼は私を食い入るように見つめた。

「お父さんやお母さん?」

「……はい。私は両親のために、ウエディングプランナーになったんです」

それを誰かに打ち明けたのは初めてだった。

けれど彼になら聞いてほしかった。

目を見開く彼に、私は続ける。

「私の両親がすでに他界しているのは以前に話しましたよね……?」

「ああ、紗衣が十八歳のときにと」
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