身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「初めて顔を合わす前の話だ。沙絵との結婚式の打ち合わせに一度も行かなかった俺に、紗衣は毎回メールで詳細を送ってくれただろう」

「見てくれていたんですか?」

「ああ」

菖悟さんはなにげなく首肯したけれど、私は目を洗われる思いだった。当時、一度も彼から返信がなく、届いていないと覚悟していたからだ。

それでも私は彼の連絡先にメールを送り続けていた。電話は迷惑になっても、メールなら気が向いたときなど彼のタイミングで見てもらえるかもしれないと思ったからだ。

打ち合わせに来られなくても進捗を伝えることで、結婚式当日を想像しやすいし、楽しみにしてもらえると期待してのことだった。

「とても思いやりのある女性だと思った。だから結婚式当日のあの日、初対面でも紗衣がいいとプロポーズしたんだ。ほとんど直感だったが、狂いはなかったな」

焦がれるように目を細めた菖悟さんに、私は釘付けになった。あの日のあの言葉はきちんとした理由があってのことだったのだ。私はただの間に合わせの花嫁ではなかったのだと、今になって知る。
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