その手をつかんで
「お疲れ様です」

「ああ、今日も美味しかったよ」


すべて食べ終えてはいるが、満足した顔とは言いがたい。苦手な物でもあったかな?

それとも、仕事でお疲れかな?

彼は視線をテーブルに落として、ため息をついた。これまた珍しい光景だ。


「あの、どうかされました?」

「えっ? ああ、いや……あ、でも、俺に興味を持ってくれるなんて珍しいね」


彼が珍しい顔をするから、つい私までいつもと違うことを言ってしまった。

一変して、明るい表情になって戸惑う。


「いいえ、別に興味があるわけじゃ……」

「はあー」


やはり気がかりなことがあるようだ。蓮斗さんはまた大きなため息をついて、項垂れた。こんな様子を目の前で見せられて、さすがに放置できない。


「なにかお仕事で大変なことでも?」

「仕事とは関係無いんだけどね、明日、明後日はここで食べられないのが辛くて……野崎さんに会えないから」

「そうですか……」


どう返したらいいのか、迷う。毎日来なくていいと思っていたけど、こんなにも苦しそうな表情をにされると、違う意味で困る。

来ないのを喜びたいのに、喜べなくなるではないか。
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