その手をつかんで
ふたりの結婚は会社の繁栄にも繋がり、輝かしい未来。それなのに、私の視界は霞む。めまいがしそうなり、頭押さえて、目を閉じた。


「野崎さん、どうしたの? 大丈夫?」

「あ、小川さん……」


私を支えるように、小川さんが背中に手を添える。

小声で「大丈夫です」と返した。杉田くんも近くにいて、私の顔を覗き込んだ。


「顔色、悪いよ。医務室、行く?」

「ううん……たいしたことないから」

「でも」


心配してくれる小川さんと杉田くんに笑顔を見せた。


「本当に大丈夫ですから。ありがとうございます」


安心してもらうようお礼を伝えたのだが、ふたりはまだ心配そうだ。そんなふたりの向こうから視線を感じた。

あ、蓮斗さん……。

一瞬目が合ったけれど、ふいっと逸らされる。蓮斗さんは社長と共に車の後部座席に乗った。

車が発進すると、見守っていた社員たちが様々な方向に動き出す。

私の腕を小川さんが軽く掴む。
< 108 / 180 >

この作品をシェア

pagetop