その手をつかんで
蓮斗さんが私に寄り添って、会釈した


「今後いろいろと顔を合わせる機会があると思いますが、よろしくお願いいたします」

「私によろしくされてもね……」


常磐院長は不機嫌そうに返しながら、ゆかりさんを見た。


「うちのゆかりと一緒になってくれるものだと思っていたからね……まさか別の人と結婚するとはね」


普通なら婚約したことに対して、お祝いの言葉を言うと思う。だけど、自分の娘を振った相手には言えない。

誰もが何も言えなくなっていると、ゆかりさんが口を開いた。


「野崎さん、それ婚約指輪? 見せてもらってもいいかしら?」

「あ、はい」


ゆかりさんに指差された左手を前に出した。食い入るように見るゆかりさんが何を言うのかと怖くなる。

横取りしたのではないけれど、蓮斗さんと結婚するつもりでいたゆかりさんからしたら、私は憎らしい相手かも。


「素敵ね。私もいつかこんな指輪をもらいたいわ。お父さん、私お見合いするからどんどん持ってきて」

「あ、ああ。うん。父さんに任しとけ」


ゆかりさんは「お願いね」と悲しげに口元を緩めた。ゆかりさんの気持ちを思うと、胸が痛くなる。
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