その手をつかんで
だから、彼と過ごす時間をなくしたいのに、時間をくれないかと言われるとは……どうしよう。

結局私は、頼まれたら断れない。


「私たちのお付き合いはお試しで、イヤだと思ったらお断りしていいんですよね?」

「うん、そうだけど。俺のこと、もうイヤだなと思ったの? こいつダメだなと?」

「いえいえ、蓮斗さんにダメな部分、ないですよ。今日、食事をして、蓮斗さんは素敵な人だと改めて思いました」

「えっ……それなのに何で断るの? 理由は?」


素敵な人だと言っておきながら断るなんて、おかしな話だろう。それに、彼は振られることを想定していない。

返事に悩んでいると、続けて話してきた。


「もしこの関係を続けてくれるなら、明日花が迷うことのないよう俺のすべてを見せたいと思う。どう? 俺のすべてを見てから判断してくれない? 今日はほんの一部だからね」

「そんな……すべてなんて……」


蓮斗さんは自信があるのだろう。すべてを見せたら私が断らないと……。


「そのかわり、明日花も俺に隠さないでね。俺も明日花のすべてが見たい」

「ええっ……」
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