その手をつかんで
彼の言葉に私は思わず自分を抱きしめた。心の中まで見透かされそうで、怖い。

そんな私に蓮斗さんが口元を緩ませた。


「いくらなんでも同意なしで身ぐるみ剥がすことはしないから、そこは安心して」

「あ、はい……」


蓮斗さんは紳士的な人だ。瑠奈も言ってたけど、無理強いはしない人だと思える。

まだ不安な部分は多いが、頑なに拒否できないのでお試し交際は続けるしかないようだ。


「よろしくね」と言われて「よろしくお願いします」と仕方なく答えた。あくまでも仕方なくだ……。

帰りの車では私が寝なかったので、楽しく話ができた。蓮斗さんは話し上手だし、気配りもできる人だ。自分だけの話ではなく、私のことも自然な流れで聞いてくれる。


「コスモス、夜でもきれいに咲いているね」

「はい、儚げなが感じがいいですね」


道路わきのプランターに植えられているピンク色や白色のコスモスが、風に揺られていた。街灯が微かにコスモスを照らしていて、ほんわか浮かびあがる感じが良い。


「なるほど、儚げか。明日花は、なんの花が好き?」

「そうですね、つまらない答えかもしれませんが、バラが好きです。香りもいいですし、見た目の華やかさに魅かれますし、憧れの花ですね」
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