その手をつかんで
お兄さんはそんな私に柔和な笑みを浮かべた。


「真面目なんだろうね」

「いえ、そんなことは……」


ないとは言い切れないが、人から真面目と言われるのは好きではない。固い、つまらないと言われているように感じるから……。


「でもね、明日花はお茶目でかわいいところもあるのよ。普段落ち着いている明日花が慌てるとことか、ギャップ萌えしちゃう」

「え、ギャ、ギャップ萌え?」


初めて言われた言葉に困惑して、あたふたと手を動かしていると、「プッ」とお兄さんが噴き出した。


「あはは、確かにかわいいな。瑠奈の言うギャップ萌えがわかる」

「でしょー? こういう明日花は抱きしめたくなるくらいかわいいのよ」


なぜか私のことで盛り上がる兄妹に、顔が熱くなった。かわいいと連発しないでほしい。

熱い顔を手で仰ぐとまたお兄さんに笑われたが、はたと真剣な表情に変えた。

なにかあった?

不安になって私を見る彼を見つめ返す。

そのとき、またドアがノックされて、きれいな女性が入ってきた。


「こんにちはー。蓮斗さんがいらしていると聞いたから、会いに来ちゃった」

「あ、ゆかりさん。こんにちはー」
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