オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「へぇ、西園寺さん頑張ってたんだ」
「はい。覚えが良くて、店長も驚いてました」
夕食中。今日の出来事を晴くんに報告する。こんな風に向かい合って食事をするのが当たり前になっている。私はいずれこの家に引っ越してくる予定だ。まぁ、お義父さんにお許しがもらえたらの話だが。
「来週だけど、予定通りで大丈夫かな?」
「あ、はい。大丈夫です」
「緊張しなくていいよ。親父には俺から話を通しているし、それに了承をもらえるまで、何度だって説得するつもりだ」
晴くんは穏やかな口調で諭すように言う。だけどやっぱり、あの鬼の形相が頭から離れない。またあんな風に怒鳴られたら立ち直れないかも。
そうこう悩んでいるうちに、ご両親との食事会の日はあっという間にやってきた。一応今日は着物を着せてもらった。だけど慣れないせいか、何度も突っかかる始末。
「里香、大丈夫?」
「あ、はい」
ストライプのスリーピースのスーツを着こなす晴くんが、エスコートしてくれる。すごく様になっていて、何度も目を奪われてしまう。
場所はベリーヒルズ内にある、割烹料理屋。門構えからして品位があって、すでに怖気づいてしまいそう。
そんな私に気が付いた晴くんが、そっと顔を覗き込んでくる。
「里香。俺が里香のどこに惚れたかわかってる?」
「あ……笑顔?」
「そう。俺は、君の笑顔が好きだ。だから胸張って」
「はい」
そう素直に返事をすると、晴くんが微笑みながら頷く。私は口元を引き上げると、よし! と心中で意気込んだ。