オオカミ社長の求愛から逃げられません!
じっと私の返事を待つお義父さん。緊張でうまく言葉が出てこないが、思い切って口を開く。
「その時は二人で考えます。ですが、例え晴久さんが八神家の人間じゃなくなっても、私の気持ちは変わりません」
これが素直な気持ち。どんな時も私だけは彼の味方でいたい。
地位? 家柄? そんなのいらない。
「八神家の看板がなくなった晴久も愛せると?」
「はい」
「真っ直ぐな瞳。面白い子だ」
すると、何がおかしかったのか、お義父さんが強面を僅かに緩ませ笑い始めた。思わずキョトンとしてしまう。
「藤堂さん。今、西園寺さくらさんと一緒に働いているらしいね。君が掛け合ってくれたって、さくらさんから聞いたよ」
西園寺さんが……? 知らなかった。
「彼女のお父さんまで、君のことを褒めていた。娘が変わろうとしているのは、藤堂さんのお陰だって。彼とは旧友でね。昔よく遊んだ仲なんだ。二人から、晴久たちを認めてあげろと諭されたよ。頭ではわかっていた。親が子供の結婚を決めるのはナンセンスだと」
だけど会社の為、八神家のため。それは彼なりの正義で、心を鬼にしていたのだと感じた。
「二人がいかに想い合っているか、よくわかった。好きにしなさい。その代わり、八神家を絶やさないこと。発展のためにベストをつくすこと、それだけだ」
そう言うとお義父さんはお茶をすすっていた。ホッと肩から力が抜ける。そんな私を、お義母さんが晴くんとよく似た優しい目で見ていた。
「ありがとうございます」
嬉しくて思わず手を取り合う。それを見たお義父さんにゴホンと気まずそうな咳払いをされ、慌てて離した。だけどそれでもにやけ顔を抑えられなかった。晴くんと家族になれるのが嬉しくて、滲んだ涙をそっと指で拭った。