オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「里香、終わった?」
翌日。閉店作業をしていると、まるで随分前からそう呼んでいたかのような口ぶりで私の名前を呼んだのは、八神社長。突然の登場に、ショーケースを拭いていた布巾を落としそうになった。
「帰るなら送るよ」
腕を組み足をクロスさせる彼は、まるでモデルさんのようで、行き交う女性が次々に振り返っている。
だけどそれすら気に留める様子もなく、フリーズする私を見つめている。
エプロン姿にお店の帽子をかぶる私は、彼のお手伝いさんだと言ったら、きっとみんな納得するだろう。そのくらい、雲泥の差がある。
「まだ、締めの作業が残っているので……」
「じゃあ駐車場で待ってるよ」
平然とそう言う彼を見て、昨日のは冗談じゃなかったんだな、と思った。
「で、でも……」
「いいのいいの気にしないで。俺が好きで待ってるんだから」
彼が強引なのは昨日でわかった。きっと私が今ここで断っても、頑なに譲らないだろう。
「わかりました」
観念して頷くと、凛々しい顔が嬉しそうに緩む。その顔に、思わずトクンと心臓が跳ねた。
イケメンが笑うとこんな破壊力があるんだ。そんなことを考えながら、レジの締めの作業に取り掛かった。