オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「里香は家族と住んでるの?」
「あ、はい。父と母とあと、高校生の弟がいます」
「へぇそうなんだ」
一人暮らしに憧れた時期はあったけれど、正直今のお給料だけじゃ難しいし、それに家族のことは大好きだ。だからわざわざ家を出る必要もない。のんびりした私には、仕事と家の往復だけの平穏な日々が向いていると思う。
「着きました」
気が付くと家の目の前で車は停車していた。車だとあっという間だ。
「ありがとうございました」
八神社長と運転手さんにお礼を言い車を降りる。するとなぜか、八神社長まで降りてきた。
「ど、どうしたんですか?」
「家に入るまでお見送りするよ」
「そんな、目の前ですし大丈夫ですよ」
ぶんぶんと顔の前で手を振る。そこに、背後から誰かが近づいてくる気配がした。振り返れば野球のバッドを手にした弟の悠太が立っていた。
「姉ちゃん?」
「ゆ、悠太……!」
まずい、こんなところ見られたら冷やかされかねない。
だが時すでに遅し。焦る私を尻目に、悠太は八神社長を完全にロックオンしていて、八神社長も悠太のことを興味深そうに見ていた。
「こんばんは。初めまして、八神と申します」
「こ、こんばんば。つーか、なんかすげーな、この人」
一言言葉を交わしただけで一般人じゃないことが高校生の悠太にもわかったようで、完全にたじろいでいる。