オオカミ社長の求愛から逃げられません!


「お父さんはよく料理をされるんですか?」
「えぇ、まぁ。お母さんと二人でキッチンに立つのが好きなんです」
「へぇ、そうですか」

八神社長は物珍しそうにしている。

そういえば、私が物心ついた時から二人はいつもあのキッチンに並んで立っていた。
それがうちでは普通で、当たり前の光景だった。

どちらかが風邪で寝込めば傍で看病していたし、いつも何をするにでも一緒に行動している。持ちつ持たれつの二人の関係は私の憧れでもある。

「八神社長」

すると、お母さんが箸を置き改まったように八神社長を呼んだ。それに気が付いたお父さんも、ビールを置く。

「うちの娘は不器用で臆病なところがありますが、どうぞ末永くよろしくお願いします」
「ちょっと、お母さん!」

娘を易々と差し出す母親がどこにいるよの。

お父さんも頭下げてるし。こんなはずじゃなかったのに。結婚の挨拶になってるし……。

「はい。僕も里香さんにいいお返事をもらえるよう頑張ります」

どうして私相手に頑張るの? そんな価値、ないのに。

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