オオカミ社長の求愛から逃げられません!
名のない毒入り菓子


晴くんの家に来て二週間がたった。

ここでの生活にも慣れたし、心配していた元カレからの嫌がらせは今のところない。そろそろ仕事に復帰してもいい頃なのではと、晴くんと相談しお店に出向くことにした。

久しぶりにみんなに会えると思うと胸が弾んだ。迷惑かけた分、一生懸命働かなくちゃ! そう意気込んでテナントの入り口をくぐる。

通いなれた道。ほのかに香る甘い匂い。それらが私の気持ちをぐんと引き上げてくれる。

あー早くお店に戻りたい。みんなと一緒に働きたいな。そう意気込んでいた矢先、目の前に現れた信じがたい現実に、愕然とした。

「え……? どういうこと?」

三日月堂はシャッターがおり、閉まっていたのだ。今日は定休日じゃない。いったいどういうこと? 呆然としていると、シャッターに貼られた張り紙に目が留まった。

見れば一昨日の日付で「しばらく休業いたします」の文字。

「休業?」

そんなの聞いていない。今までこんなことなかった。何かあったのだろか? まさか雅樹が何かした? 嫌な想像がどんどん膨らむ。

とりあえず私は、その場で杉本さんに電話を掛けた。

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