オオカミ社長の求愛から逃げられません!
『はい。もしもし』
私からの電話を予想していたのか、杉本さんはすぐに出てくれた。だけどその声には、いつもの覇気がない。
『あの私今お店に来てるんですが、休業って張り紙を見て……』
『……あぁ、そうなの。実は店長と話して、少し休むことにしたの』
『何があったんですか?』
矢継ぎ早に聞くも杉本さんは黙り込んでいる。
あんな脅迫まがいなメールも来ていたし。きっと何かあったんだ。もしかすると私のせいかもしれない。
『あの、教えてください。私も三日月堂の一員です』
そう言うと、杉本さんは言いづらそうに切り出した。
『実はね、今まで取引していた業者さんが、急に材料が卸せないって言いだして。それで職人さんたちがお菓子を作れなくなって……私にもいったい何がなんだか』
『そんな……』
まさかこれも雅樹の仕業なの?
『とりあえずは今は店長からの連絡を待っているところ。私達にはどうすることもできないし』
杉本さんの消沈した声に胸が痛んだ。きっと私が呑気にしていた間に、すごく大変だったに違いない。
もっと早く気がついていれば、何かできたかもしれないのに……。
『そういうわけだからさ。この先再開できるかもわからないし、私も職探ししなきゃいけないかなーと思って、今求人見てたとこ』
私に心配かけまいと、わざと明るく振舞う杉本さんの声にじわりと視界が揺れた。
杉本さんだって悔しいに決まっている。私と同じくらい三日月堂が好きだから。
何もできない自分が歯がゆくて、スマホを握りしめたまま、ぎゅっと唇を噛んだ。