オオカミ社長の求愛から逃げられません!


「いえ、ちょっと仕事で色々ありまして」
「仕事ってそこの三日月堂だっけ?」
「あ、はい」

よく知ってたな。あ、そうか。初対面の時私は制服姿だったんだっけ。

「クビにでもなったの?」
「そういうわけではないんですけど……。まぁそれに近いと言いますか」
「ふーん、大変ね」

なんて言いながら、手に持っていた買い物袋から何かを取り出していた。

ん? ミニトマト? しかもそれをポイポイと口に放り込んでいる。あまりにも突飛な行動に目を剥く。

「食べる?」
「いえ、結構です」

不思議な人だなー。自由奔放ていうか、本当に猫みたい。

「ねぇ、仕事って楽しいの?」
「え?」
「私にはわかんないから。仕事にかける情熱とかそういうの。生まれてこの方仕事をしたことないし」
「一度も?」
「だって働く必要ないし」

その発言に、やっぱり正真正銘のお嬢様だと思った。だけどどこかいつも退屈そうで、時間を持て余している感じがする。


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