オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「仕事は楽しいですよ。色んな人に出会えるし、やりがいもあるし、自分を成長させてくれます」
「ふーん、なんかめんどくさそうね」
「そんなことないですよ。私は今の仕事が大好きです」
そう言うと、さらに首をかしげていた。きっと根っこから価値観が違うんだろう。
「まぁ、私には関係ないことだけど。せいぜい頑張れば」
そう言い残すと西園寺さんはエレベーターには乗らず、どこか面白くなさそうな顔でエントランスを出て行った。何か気に障るようなこと言っちゃったかな。
……とういか、同じマンションに住んでいたんだ。
その日の夜。
「明後日から出張になりそうなんだ」
夕食中、綺麗な作法でハンバーグにナイフを入れる晴くんが言った。
「え!? 出張ですか?」
「あぁ、一週間ニューヨークに。ちょっと大きな商談があって」
「そう、ですか」
それを聞いて途端に寂しい気持ちになる。一週間も会えないなんて……。
「里香もそろそろ復帰するんだよね?」
そう問われ、あっ……と思った。
いつ言おういつ言おうとタイミングを見計らっていたけど、三日月堂が休業していることを、結局まだ言い出せていない。だけどそんな大事な時に、また私のことで心配かけたくない。
「えっと、そうですね」
「また何か嫌がらせされたらすぐ言えよ? ニューヨークからでも飛んでいくから」
「まさかそんな」
いくら晴くんでも、さすがにそんなことできるはずないだろう。真顔でそう言う彼を見て、思わずふふっと笑ってしまった。