ぜんぶ欲しくてたまらない。



「……もしもし」



電話の相手はさっきまで一緒にいた俊介だった。



「……何?今なんて言った?」



焦っているのか早口で聞き取れない俊介の声。


電話の向こうはザワついていて、まだ屋台の方にいることがわかる。


そのザワついた音の中に芽依の親友、岩佐さんの芽依を呼ぶ声が聞こえた。


まさか、



「芽依になんかあった?」



ゴクリと唾を飲み込む。


目の前で首を傾げながら不思議そうにしている梨里愛は今俺の視界に入らない。


ただただ無事でいて欲しいと願いながら、良くないことを思い手が震える。



「芽依ちゃんがいなくなった」


「え?なんで……さっきまで俊介たちと一緒に」


「航大たちがいなくなってから走ってどっか行っちゃんだんだよ!咲良ちゃんとずっと探してるけど見つかんないんだ!」



俊介の息の切れた呼吸で長い時間探し回っているのが伝わってくる。



「もしもし倉敷くんっ!?」



次に電話に出たのは岩佐さんだ。


俊介のスマホを貰って俺に話しているんだろう。



「お願い倉敷くん、芽依ちゃんを探して?わたしたちじゃ見つけられないの。どこ探してもいないの……倉敷くんなら、芽依ちゃんのことをよく知ってる幼なじみの倉敷くんなら見つけられるかもしれない!」



涙ぐんだ岩佐さんの声。


本当に俺なら見つけられる?


そんな迷いなんて関係なかった。


電話を切った俺はすぐに立ち上がる。






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