ぜんぶ欲しくてたまらない。
「ねぇ、浮気してんの?」
聞く場所とタイミングを選ぶべきだった。
それは俺の失態だったと思う。
久しぶりに食卓テーブルを3人で囲んでいた夕飯の時間。
母さんが箸を手から落として固まった。
明らかに動揺している母さんとは真逆で、父さんは冷静に箸を置いて俺の方を向いた。
「あぁ、そうだ」
こういう時はたとえ無駄でも一度は嘘をつくものなんじゃないか。
仮にも俺は2人の息子だ。
物分りはいい方だとはいえ、まだまだ子どもだ。
もしかしたらそうかもしれないと疑い、俺から話を切り出したとはいえ、まだ心の中では認められずにいたんだ。
それを簡単に肯定されてしまうなんて。
「ちょっと、貴方……!」
「お前もわかってて何も言ってこなかったんだろう?」
「……っ」
母さんもわかっていたらしい。
わかっていながら仮面夫婦を続けていた母さんは今までどんな気持ちだったんだろう。
仮にも愛していた父さんに裏切られて、きっとそれでも好きな父さんを母さんは突き放せなくて。