ぜんぶ欲しくてたまらない。



最近は父さんと顔を合わせなくなった。


あれからどれくらい時間が経っただろう。


気がつけば家の中から父さんの私物が無くなり、親は離婚していた。


母さんは吹っ切れたのか、泣く姿を見せることもなく新しく働き始め、前と同じ普段の生活に戻っていた。


いや、むしろ前よりも生き生きとしていたかもしれない。


変われていないのは俺だ。


もうすぐ受験校を決めなければいけないという重要な時期に来ているのに、荒れた生活のまま。


強いて言えば、取っかえ引っ変えだった彼女がずっと梨里愛だったことが唯一変わったところ。



「航大、高校受験はどうするの?」



久しぶりに母さんと夕飯を食べる。


梨里愛は用事があるらしく、遊ばずに帰ってきた日のことだった。



「……別に、決めてない」



将来なんてどうでもよかった。


特に夢もない。


適当にどっか高校行ければいいかと軽く思っていただけ。



「お母さんね、元いた街に戻ろうかと思ってるの」


「……!?」



だから、母さんの一言に驚いた。



「……帰る?あの街に?」


「うん。今の職場、向こうにも系列企業があるみたいでね、転勤希望が出せるの。航大にも聞いて良ければそうしようと思ってるんだけど……どうかしら?」



帰ればまた芽依に会える?


そうだ、芽依。


俺との別れ際、子どものように泣きじゃくっていた芽依。


芽依は今どうしてるんだろう。



俺は?


俺は一体今、何をしているんだろう。



まるで今の俺は、大嫌いな父親みたいだ。





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