ぜんぶ欲しくてたまらない。



「そっかー、ちょうど重なってねぇ」



コウくんのお母さんの用事とたまたまわたしのお母さんが当てた懸賞の海外旅行が重なって、今の状況になってしまった。


コウくんと一緒に住める嬉しさと戸惑いと。


とても複雑な気持ちだ。



「うん……嬉しいんだけど、何してても近くにコウくんがいるとドキドキがおさまらなくて」


「きゃーっ、恋する乙女!芽依ちゃん可愛すぎるっ」


「もー!わたしは真面目に困ってるのに」


「うん、ごめんごめん、そうだよねぇ」



初めはわたしのことをからかっていた咲良ちゃんも腕を組んで真剣に考えてくれている。


そんな咲良ちゃんの口から出てきたのは──



「自分の気持ちに素直になっていいんじゃないかな?」


「素直に?」


「うん。芽依ちゃんは倉敷くんと一緒にいるのは嫌?」


「ううん、むしろ嬉しくてたまらない」


「それなら楽しんじゃえばいいんだよ!」



あまりに単純な答えに、わたしはキョトンとしてしまう。





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