ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
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会社を早退して、すぐに愛花の学校へと向かった俺は、ひたすらに携帯とにらめっこをしていた。
痛いほどに注がれている視線に素知らぬ顔をして、門柱に寄りかかる。
……早く来てくれ。
先ほど到着の連絡をしたばかりなので仕方ないが、一刻も早くここを立ち去りたかった。
……まさか、変質者だとか思われないよな。
帰宅する生徒たちからの注目を一杯に浴びながら、俺は突然不安になった。
深く考えずに迎えに来たけれど、スーツのせいか、思った以上に目立ってしまっている。
物珍しい視線を送ってくる女子高生たちの目に、俺はどう映ってるんだか……。
どうか通報されませんように。
心の中で願いながら、荷物を持った腕に、花束を抱え直した。