ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

顔を上げた愛花に、俺は自分が座っている前のスペースを指差した。


「見るなら、ここ」

「え……」

「俺もみたいから」


愛花はもじもじと躊躇ってから、遠慮がちに近づいてきた。

背中をこちらに向けて俺の足の間におさまったその体は、いつもよりさらに小さくなっている。

心なしか前のめりになっているせいで、手元のアルバムはちっとも見えなかった。


「おい。見えないだろ」


俺は愛花のお腹に腕を回すと、ぐいっと引き寄せた。

「ひゃっ」というか弱い悲鳴をあげながら、華奢な体は、あっけなく倒れ込んでくる。

寄りかかる形になった愛花を後ろからすっぽりと包み込むと、アルバムがちょうどよく見える角度になった。

手をのばして、パラリとページをめくる。


「ほら、これが俺のクラス」


言いながら見下ろすと、愛花はじっと固まっていた。

耳にかかった髪のせいで、真っ赤な肌が後ろからでも丸見えになっている。


……。
ただからかうつもりだったけど、……結構、やばいかも。


胸がぞくぞくと踊り出してきて、今更、自分で自分の首を絞めていることに気がついた。
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