ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
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堪えきれず、ふあ、と口が開いた。
欠伸で涙ぐんだ視界を、何度か瞬いてはっきりさせる。
「最近やけに眠そうだよな」
隣から気遣わしげな目を向けれて、俺はうん、と首を動かした。
「眠れなくて」
「大丈夫か?」
「……へーき。原因はわかってるから」
誰かさんと同じベッドで寝るようになってから、十分な睡眠がとれていない。
自制心を意識するあまり、気が休まらないからだ。
けれど、こうして影響が出ているというのに、離れようとは思えないのだから困ってしまう。
苦笑した俺に、萩原はふうん、と言った。
「それより、急にどうしたんだよ。外で食べよう、とか言い出したと思ったら……珍しいな、こういう店」
「……まあ、ちょっとね」
俺の言葉に、萩原はぼんやり濁した。