ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


***


堪えきれず、ふあ、と口が開いた。

欠伸で涙ぐんだ視界を、何度か瞬いてはっきりさせる。


「最近やけに眠そうだよな」


隣から気遣わしげな目を向けれて、俺はうん、と首を動かした。


「眠れなくて」

「大丈夫か?」

「……へーき。原因はわかってるから」


誰かさんと同じベッドで寝るようになってから、十分な睡眠がとれていない。

自制心を意識するあまり、気が休まらないからだ。

けれど、こうして影響が出ているというのに、離れようとは思えないのだから困ってしまう。

苦笑した俺に、萩原はふうん、と言った。


「それより、急にどうしたんだよ。外で食べよう、とか言い出したと思ったら……珍しいな、こういう店」

「……まあ、ちょっとね」


俺の言葉に、萩原はぼんやり濁した。
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