転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「ほ、ほんとに、あったかいですね。変わってないんだな~」


 羞恥のあまりうっかり結乃がした失言も、このとき自分の煩悩を抑えるのに必死だった春人には届いていない。


(この反応は……どう捉えていいんだ?)


 少なくとも、結乃は自分に触れられても嫌悪感は抱かないらしい。

 恋愛感情までは発展していないとはいえ、憎からず思ってくれていると考えてしまっても、いいのだろうか。

 結乃もすっかり言葉数が減り、春人は春人で悶々としながら歩き続けて、気づけば目的の駅へ到着していた。

 別れなければならない改札口の前で、繋いでいた手がどちらともなく離れる。

 向かい合った結乃の顔は今も赤い。それを見て春人の中にまた情欲がわき起こるが、なんとかまた無表情の内側に押しとどめた。


「えと……今日は、ありがとうございました」
「ああ」


 コクリ。うなずきながら発した返事は、自分でもあまりに言葉足らずだと思う。

 しかし、こんなシチュエーションで気の利いたセリフが出てくるなら、普段から春人は周りに誤解を与えていないのである。

 こちらと目を合わせることなくうろうろと視線をさまよわせて立ちすくむ結乃も、さすがに今は春人のあんまりな口下手具合に困っているのだろうか。


(もっと、何か……)


 どうにか春人が口を開こうとするより先に、結乃が思いきった様子で「あの!」と顔を上げる。
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