転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「これ、今日、渡そうと思ってて……っ」
言いながら持っていたバッグの中をゴソゴソと探り、黄色いリボンで綺麗にラッピングされたブルーの箱を取り出した。
虚をつかれた春人は、差し出されたそれを見下ろして口を開く。
「……これは?」
「バレンタインのチョコ、です」
彼女の答えに、無言のまま目を丸くした。
そんな春人を前にして、結乃はやはり落ちつかない様子で続ける。
「ごめんなさい、1週間も遅れちゃって……今日もいつ渡そうかずっとタイミング計ってたんですけど、結局別れ際になっちゃいました」
そう話す結乃が、困ったように苦笑した。
バレンタインデー。いかにも恋人たちが盛り上がる浮かれたイベントに興味のない春人でも、さすがにそれが何月何日でどういったことを行う日なのかは知っている。
自分に向けて伸ばされた白い手から、そっと小包を受け取った。
「わざわざ、用意してくれたのか。ありがとう」
礼を言う春人の表情はびっくりするほどやわらかくて、その甘さに結乃は思わず呆けてしまう。
ちょうど1週間前にあったバレンタインデー当日。義理か本命、込められた意味は違えど、春人は職場やいつも利用している駅などで複数の女性からチョコレートを差し出されたが、誰のものも受け取らなかった。
それは彼にとって、実際にもらえるかはさておき──この日に纏わるプレゼントはただひとり、結乃からのものしか欲しくないという思いがあったからで。
期待を押しつけるつもりはなかったし、それで構わないと思っていた。だけどこうして、結乃が自分のためにバレンタインチョコを用意してくれていたとわかり……春人は自分でも驚くくらい、うれしさで舞い上がっている。
言いながら持っていたバッグの中をゴソゴソと探り、黄色いリボンで綺麗にラッピングされたブルーの箱を取り出した。
虚をつかれた春人は、差し出されたそれを見下ろして口を開く。
「……これは?」
「バレンタインのチョコ、です」
彼女の答えに、無言のまま目を丸くした。
そんな春人を前にして、結乃はやはり落ちつかない様子で続ける。
「ごめんなさい、1週間も遅れちゃって……今日もいつ渡そうかずっとタイミング計ってたんですけど、結局別れ際になっちゃいました」
そう話す結乃が、困ったように苦笑した。
バレンタインデー。いかにも恋人たちが盛り上がる浮かれたイベントに興味のない春人でも、さすがにそれが何月何日でどういったことを行う日なのかは知っている。
自分に向けて伸ばされた白い手から、そっと小包を受け取った。
「わざわざ、用意してくれたのか。ありがとう」
礼を言う春人の表情はびっくりするほどやわらかくて、その甘さに結乃は思わず呆けてしまう。
ちょうど1週間前にあったバレンタインデー当日。義理か本命、込められた意味は違えど、春人は職場やいつも利用している駅などで複数の女性からチョコレートを差し出されたが、誰のものも受け取らなかった。
それは彼にとって、実際にもらえるかはさておき──この日に纏わるプレゼントはただひとり、結乃からのものしか欲しくないという思いがあったからで。
期待を押しつけるつもりはなかったし、それで構わないと思っていた。だけどこうして、結乃が自分のためにバレンタインチョコを用意してくれていたとわかり……春人は自分でも驚くくらい、うれしさで舞い上がっている。