転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 本日3月28日、土曜日。
 春人と結乃は役所に婚姻届を提出し、晴れて夫婦となった。

 とはいえ、その手続きを行ったとたんに自分の中で何かが大きく変化したということは、当然だけど決してなくて。

 午前中の早いうちに役所の時間外窓口を訪れたあとは、ふたりの新居となる春人のマンションで引っ越し作業に取りかかり、なんとかひと通りの片づけを終えてからは細々としたものを揃えるためホームセンターや家具量販店、スーパーへと向かった。それでも今日だけでは用が足りず、買い出しへは明日も行く予定である。

 昼食は出前、夕食は外で済ませ、結局新居に戻ってひと心地つけたのはついさっきだ。
『白川結乃』から『黒須結乃』へと名前が変わった実感があまりないまま、リビングの壁にかかっている時計はすでに21時過ぎを指していた。

 一日中忙しなく動き回ったため、身体はヘトヘトだ。春人だって同じように疲れているはずだけど、先に風呂を使うよう勧めてくれたその優しさに、今日ばかりは甘えてしまうことにする。

 駅からもほど近い地上15階建てマンションの12階にあるこの2LDKの一室は、マンション自体がおととし完成したばかりとあってとても綺麗に保たれていた。

 1階のエントランスホールにはコンシェルジュカウンターがあり、いわゆる高級マンションの様相に初めてここを訪れた結乃はおののいたものだ。

 ここへは完成と同時に入居したらしいが、そもそも春人自身があまり物を置かないタイプの人間なため、もったいないことに大きなウォークインクローゼットのある1番広いひと部屋は使われないままずっと放置されていた。

 話し合った結果、そこをふたりの寝室とすることに決め、結乃の引っ越しに合わせてクイーンサイズのベッドも購入した。

 ちなみに元々春人が寝室にしていた洋室はワークデスクや本棚をそのままに、ベッドだけを撤去して書斎としている。
< 48 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop