転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
その後もしばらく雑談は続き、キリのいいところで土屋が席を立った。
「突然お邪魔しちゃってごめんなさいね。でも、黒須先生とゆっくりお話しできてよかったわ」
「いえいえ、こちらこそ。お話しを聞けて勉強になりました」
「うふふ。そう思ってもらえてるならうれしいわね」
そうして保健室のドアをくぐる間際、土屋は思いついたように結乃を振り返る。
「そうそう、産休や育休を取得したいときが来たら、遠慮なく言うのよ? 職場環境はもちろんだけど、先生たちのプライベートが充実して心の安定が保たれていることが、結果的に子どもたちの笑顔にも繋がるのだし」
本来ならばただひたすらありがたいはずの申し出に、ドアのそばまで見送りに立っていた結乃は一瞬ギクリと身体をこわばらせた。
けれどすぐ、取り繕うように笑みを浮かべる。
「……ありがとうございます。そのときが来たら、お世話になります」
今度こそ部屋を出た土屋が閉めたドアをその場でなんとはなしに見つめたまま、ため息を吐く。
……まさか、言えるわけがない。
入籍から、今日でちょうど20日目。にもかかわらず、夫である春人と自分は──産休どころか、子どもを作るその行為自体を、未だ一度もしていないだなんて。
「突然お邪魔しちゃってごめんなさいね。でも、黒須先生とゆっくりお話しできてよかったわ」
「いえいえ、こちらこそ。お話しを聞けて勉強になりました」
「うふふ。そう思ってもらえてるならうれしいわね」
そうして保健室のドアをくぐる間際、土屋は思いついたように結乃を振り返る。
「そうそう、産休や育休を取得したいときが来たら、遠慮なく言うのよ? 職場環境はもちろんだけど、先生たちのプライベートが充実して心の安定が保たれていることが、結果的に子どもたちの笑顔にも繋がるのだし」
本来ならばただひたすらありがたいはずの申し出に、ドアのそばまで見送りに立っていた結乃は一瞬ギクリと身体をこわばらせた。
けれどすぐ、取り繕うように笑みを浮かべる。
「……ありがとうございます。そのときが来たら、お世話になります」
今度こそ部屋を出た土屋が閉めたドアをその場でなんとはなしに見つめたまま、ため息を吐く。
……まさか、言えるわけがない。
入籍から、今日でちょうど20日目。にもかかわらず、夫である春人と自分は──産休どころか、子どもを作るその行為自体を、未だ一度もしていないだなんて。