夜には約束のキスをして
美里のあとに続いて居室に入ったのは、日に一度深青の往診に来る香山家付きの医者だ。黒縁眼鏡の向こうにある理知的な目が、患者たる深青の姿を目に留めるなり、おやとわずかな反応を示した。
「少々失礼してもよろしいでしょうか」
断りを入れるのもそこそこに、和真と反対側に腰を下ろした医者は、深青を手早く診察する。体温や呼吸音、脈拍などひととおり確かめてから、彼はしっかりと頷いた。
「状態がだいぶん改善されてますね」
医者の確かな診断を聞いて、和真は胸をなでおろした。隣からも小さく吐息を吐き出す気配があり、美里もまたかなりの安堵を得たらしいと察する。
それでも、と次に疑問となるのは、なぜこうも急激な回復が見られたのかということだ。
「なにか、特別なこと、きっかけになりそうなことはありませんでしたか」
深青に付き添っていた和真に、二人分の視線が注がれる。和真は言葉に詰まった。きっかけかどうかはわからないが、特別なことと言われれば思い当たる節がないわけでもない。わけもわからないまま交わされた口づけ。再びその情景が頭に浮かんで動揺する。思い出すだけで頭の中をのぞかれるはずもないのに、大人たちを前にして居心地が悪くなった和真は視線をさまよわせた。
「少々失礼してもよろしいでしょうか」
断りを入れるのもそこそこに、和真と反対側に腰を下ろした医者は、深青を手早く診察する。体温や呼吸音、脈拍などひととおり確かめてから、彼はしっかりと頷いた。
「状態がだいぶん改善されてますね」
医者の確かな診断を聞いて、和真は胸をなでおろした。隣からも小さく吐息を吐き出す気配があり、美里もまたかなりの安堵を得たらしいと察する。
それでも、と次に疑問となるのは、なぜこうも急激な回復が見られたのかということだ。
「なにか、特別なこと、きっかけになりそうなことはありませんでしたか」
深青に付き添っていた和真に、二人分の視線が注がれる。和真は言葉に詰まった。きっかけかどうかはわからないが、特別なことと言われれば思い当たる節がないわけでもない。わけもわからないまま交わされた口づけ。再びその情景が頭に浮かんで動揺する。思い出すだけで頭の中をのぞかれるはずもないのに、大人たちを前にして居心地が悪くなった和真は視線をさまよわせた。