お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
心が乱れるときには、ほかのことで気を紛らわせるのが一番。荷物の中に詰め込んできた通信教育のテキストを取り出し、一心に打ち込んだ。
目が何度も文章を上滑りしそうになったが、頭を振って邪心を追い出す。
晴臣が帰宅したのは、それから小一時間ほど過ぎた頃だった。
スリッパの音がしたためソファから立ち上がり、「おかえりなさい」とリビングで出迎える。すると彼は、ものすごく大きなものを抱えていた。
(え? なに? ……もしかして布団?)
不織布素材の包みは丸みを帯び、それでいて大きさほどには重くないように見えた。
「それは……?」
「布団を買ってきた」
やはりそうだった。果歩と一緒に寝るのはまずいと考えたのだろう。
それはつまり、ただのキスで果歩に勘違いされては困ると思ったから。挨拶のつもりのキスなのに果歩がそれを重く受け止めていると気づき、本物の恋人ではないというけん制だ。
気持ちがまたそこで落ち込む。
「俺はこの布団を敷いてリビングで寝るから、果歩はベッドを使って」
「ダメです。晴臣さんがベッドを使ってください」