お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~

「どれも素敵ですね」
「気に入ってもらえてよかった。どれかプレゼントしようか」
「いえいえ! とんでもない!」


さんざん迷惑をかけたうえにナナセの椅子をもらおうだなんて虫が良すぎる。それこそ元彼の幸人と同じに成り下がるのも同じ。恐れ多いため急いで立ち上がった。

そこでふと、リビングのテーブルの隅に見覚えのあるものが置かれているのに気づく。果歩と半分ずつ分けた激辛煎餅が、あのときのまま五枚残っていた。

(食べなかったんだ……)

すっかり忘れていたのを残念に思っていると、果歩の視線に気づいた晴臣がそれを手に取った。


「なんとなくひとりで食べたくなかったんだ。果歩と一緒に食べた方がおいしいからね」



晴臣が屈託なく笑う。
その言い方はずるい。本心じゃないとわかっていても、ガッカリした気持ちが一気に天に舞い上がる。勘違いしたらいけないのに、晴臣の言動にいちいち左右されてかなわない。


「果歩は全部食べた?」
「はい」
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