転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
クリストファーは机の引き出しを開けてごそごそと探り、数枚の用紙を取り出した。

二百名ほどの名が記されたそれは、芸術サロンの招待客リストである。

「書き忘れていた」

そういった彼は羽根ペンを持ち直して、エマ・サノーマンの名をリストの一番下に付け足した。

それからふと、ふたつ上に書かれている名に目が留まり、首を傾げる。

「ディディエ・セニョル……これは誰だったか」

多くの者と交流することが公務の内である彼は、記憶力には自信があった。

けれどもその名に馴染みはなく、顔も思い浮かばない。

オズワルドがポケットからよく使い込んだ手帳を取り出すと、パラパラとめくっている。

その手帳には招待客のリスト以上の情報、家柄や血縁関係、身体的特徴や趣味まで、知り得る限りのことが書き込まれていた。

「ウォベック公爵のお連れ様です」

「ああ、そういえば、そうだったな」

それは先月のことだ。

芸術サロンの招待状をウォベック公爵という有力貴族宛てに送り、その返事が来たのだが、懇意にしている画廊商をひとり伴うという旨が書かれていた。

その画廊商が、ディディエ・セニョルという男であった。

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