転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
「殿下、少々口が悪うございます。お気をつけください」

「お前とふたりならいいだろ。それにしてもな……」

クリストファーは机の引き出しをもう一度開けて、開封済の封筒を二通取り出した。

「ウォベック公爵は呆けてきたのか? その返事の後に、もう一通送られてきたんだ。同伴者について書いていない、参加するとだけ書かれた偉そうな文面のものが」

「他家の催しへの返事を、手違いで殿下に送ってしまわれたのでしょうか?」

手帳をしまいながらオズワルドが推測したことに、クリストファーは声をあげて笑う。

「だとしたら、指摘せずに黙っておこう。勝手に恥をかけばいい」

「お人が悪い」

一応たしなめたオズワルドも、口元に笑みを浮かべている。

性根が清らかなままでいていいのは子供と、頼りがいのある伴侶に守られ綺麗なものしか見る必要のない夫人だけだろう。

貴族社会を優位に生き抜くには、他人の失敗を愉快だと思える腹黒さも必要なようだ。

* * *

闇夜に紛れる黒いタキシード。

はためく黒いマントはよく見ると、黒糸でバラの刺繍が施されている。

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