転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
それが佐野恵麻の最期であった。

* * *

ブルロズのメイン攻略対象、クリストファー王太子のフルネームを本人の口から聞いたことで、突如としてエマの前世の記憶が蘇った。

走馬灯を見たのは、ほんの数秒だろう。

エマの横では、レミリアと王太子が会話を続けている。

「そういえば、シンシア嬢のご結婚が決まったそうだね。おめでとう」

「ありがとうございます。清らかな姉に求婚する殿方が何人もいらっしゃいましたが、最終的に父が決めました」

「ブライアン殿は好青年だ。モンタギュー公爵家は、アリンガム・リングランドの名家で家柄も申し分ない。シンシア嬢は必ずや幸せにしてもらえる。なにも心配いらないよ」

エマはまだ驚きの中にいるが、ふたりの会話の内容が耳に入るほどには回復していた。

けれども動悸は治まらない。

ある疑惑で、頭の中が埋め尽くされそうになっている。

(ここは、もしや……)

王太子の名前だけでなく、アリンガム・リングランドという国名もブルロズと同じだ。

攻略対象ではないが、モンタギュー公爵家のブライアンの名も出てきた。

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