転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです（汗）

決定打が欲しいと思っているエマに、レミリアがムスッとして言う。

「悪かったわよ。そんな怖い顔しないで……」

「え？」

今はレミリアの態度に怒っていたわけではないのだが、考え事をしているうちに眉間に皺が寄ってしまっていたようだ。

レミリアが困り顔で、ボソボソと反省を口にする。

「私だって貴族の娘だもの、王太子殿下のお誘いを受けた方がよかったのはわかってる。次からはちゃんとするから、叱らないで」

「レミリア様……。わかってくださればいいのですと言いたいところですけど、次の機会はないかもしれません。この失敗をどうしたら挽回できるのか……」

エマが小さく息をついたら、リビングのドアが開いて、「お帰りなさい」とシンシアが入ってきた。

婚約者のブライアンへのお礼状を今、書き終えたのであろうか。

手には十枚ほどの用紙を持っている。

「シンシア様、ずいぶんとたくさん書かれましたね。お手紙というには、枚数が多すぎるような……」

「お礼状ならとっくに届けさせたわ。これはレミリアちゃんのために書いたものよ」